らくがき-Ya!【本館】/【Fan Art】-ストレイト・ジャケット・普通の小話-

 べたネタ、ネリン編。
 中途半端で申し訳ない。書いた当時は続く予定でした。

2006/07/07 初稿
2007/02/22 修正
2016/07/10
 別館掲載に当たり改稿。

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 玄関のドアを開けると、目の前に居るのは何故かいつもとは違う人物だった。
「お早う御座います、スタインバーグさん。ネリン・シモンズ監督官の代理で参りました、フォルマと申します」
 無駄に落ち着いた良い声でその人物はのたまった。胸の内ポケットから身分証を出し、目の前にかざす。
「代理?」
 一昨日電話を受けた時、そんな事は聞いていなかったのだが。
 青年は余程訝しげな表情をしていたらしく、代理の男は困惑気味に答える。
「ネリン・シモンズ二級監督官は、昨日から体調を悪くして休養中です。連絡が行き届かず申し訳ありません」
 丁寧に謝罪の言葉を述べ、ケースSAに関する書類を青年に手渡す。
「彼女から預かった書類です。数日中に確認、サインをして、局に持参して下さい。今後の仕事についてはシモンズが復帰してからになりますが、長引くようなら、私が暫くの間代理担当になりますので、宜しくお願い致します」
 玄関で一通り用事を済ませると、代理人はさっさと帰っていった。
 珍しい事もあるもんだ。
 彼女なら自己管理もきちんとしていそうなイメージがあるので、代理人の言葉が何時までも頭の隅に残った。

 二日ほどが経過し書きあがった書類を局に持っていけば、例のフォルマとか言う男が出てくる。ネリンの仕事は、この男が一部肩代わりしているらしかった。
「長引きそうなのか? シモンズ監督官の方は」
 レイオットは訊ねた。
「何とも言い難いですね。ここ暫くハードスケジュールで動いてましたから、疲れが溜まっていたんでしょう。この際ゆっくり休んで欲しいと言いたい所ですが……。人員不足なので、私共としても早めに復帰して欲しいものです」
 大量のファイルと書類に囲まれ、ひたすら書かれている文章を目で追い、ペンを走らせながら、フォルマは疲れ気味に答えた。

 書類を提出し家に帰った後、青年は居間のソファーで買ってきた雑誌をだらだらと眺めていた。
 本当に眺めているだけで文字は一向に頭には入らない。寝ようと思って横になってみても眠れず、ソファーの上でもそもそと身体を動かした。

 全く持って落ち着かない。

 この問題を解決する方法は、多分解っている。答えもとっくに出していた。ただ、面倒臭いのである。面倒くさいと思いながら気になって悶々としているのだ。我ながら馬鹿だと思う。
 そんなヘタレな様子を見かねたのか、珍しくカペルテータが意見した。
「シモンズ監督官のお見舞いには行かないのですか?」
 レイオットはソファーの上で伸びたまま、気だるく零した。
「行ってどうなるもんでも無いし、女の一人住まいを尋ねるのもちょっとね」
「一人住まいなら、色々大変だと思うのですが」
「お友達が何とかしてくれるだろう、その辺は」
 何処までも渋っている自分に、次の瞬間ぶすりと痛い一言が刺さった。
「レイオットがまともな稼ぎにありついているのは、シモンズ監督官の御蔭です。些細な事でもいいので、受けた恩は返すべきかと」
「――――」
 カペルを見やる青年の顔には、あからさまに嫌そうな表情が浮かんでいた。少女は何処までも緩い無表情を崩さないが、微かに非難めいた気配を纏っている。
 のろのろと身体を起こすと目の前にある冷めた紅茶を一口すすり、
「コート、取ってくる」
 そう呟いて居間を出ていった。

「全く、仕方の無い人ですね……」
 珍しく呟くと、カペルテータは青年の消えた居間で大儀そうに溜息をついた。

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