らくがき-Ya!【本館】/【Fan Art】-ストレイト・ジャケット・普通の小話-

 過去編。2人ともたぶんパンツぐらいは穿いてると思う(笑)。
 良い夢なんて有得ない、だからこそ使う言葉。傍に誰が居ても孤独である事に変わり無し。

2006/06/30 初稿
2014/07/13
 HP掲載に当たり加筆修正。

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   目を閉じても眠る訳ではない。
   ただ瞼を下ろす。
   それだけの事。

 真夜中に、ふと目が覚めた。

 自分の傍らにある柔らかで温かな身体。白い肌に手を伸ばせば、静かな呼吸が眠っていると知らせる。彼女が起きないように、そっとベッドから抜け出した。広い室内を、足音を立てないように窓際まで歩く。
 まだ気怠るさの残っている身体に触れる、空気の冷たさが心地いい。
 カーテンを細く開けて外を見渡せば、中空には欠け始めた月がぽつりと浮いている。それを静かに見つめ続けた。
 今ではもう、悪夢にうなされて飛び起きるようなことは無い。それでも、眠るのを恐れて何時までも起きている事があった。一晩中鬱々として、明け方に少しだけ眠るのだ。
 ベッドの上に動き出す気配を感じ取るが、振り向かない。
「……どうかしたの?」
 甘さを含んだ眠そうな声で、この部屋の主が口を開いた。
「すまない、起こしたかフィリシス」
「別にいいわ……。どうかした?」
「……ただ、目が覚めただけだよ」
 そこでやっと振り向いた。肩を竦めてみせる。
 カーテンを元に戻してベッドの中に戻ると、彼女の頬に軽く接吻(くちづ)けた。滑らかな肌に一度だけ指先を泳がせる。
「お休み、フィリシス。よい夢を」
「お休み、レイ……」
 フィリシスがゆるりと瞼を閉じた。やがて密やかな寝息が聞こえ始める。それらを見届けてから、彼女に背を向けて自分も目を閉じた。
 眼裏(まなうら)に広がる闇。
 自分はもう、本当の意味で眠る事は無いのではなかろうか?
 そんな思いが頭の中によぎる。
 他の人々がそうする様に心安く眠りにつくことは、恐らくもう出来ない気がするのだ。確かに体の疲れを癒すことは出来るだろうが、精神はどこまでも疲弊していくばかりだ。

 もし有るとするならば、それは総てから開放される時か――。

 眠ることを望んでいるのか、そうではないのか、自分ではもう解らない。湧き上がる苛立ちに戸惑うことはあるが、それ以上深く考えることはどうしても出来なかった。何かが、禁忌のように思考を停止させる。
「…………」
 ふと口元を歪めると今度こそ無意味な思索を打ち切り、レイオットは闇の中に意識を放り込んだ。

──END──